夕げ
2020年 05月 07日
二時間の残業を終え
我が家の前まで辿り着くと
そこには 明かりが灯り
僕を待つ妻がいる
今日の仕事は ちょっと楽だったな
そんなことを思いながら 階段を昇り
出迎えてくれる 妻の笑顔に
柔らかな 優しさなど感じたりして
入れてくれた お茶を
両手で掴んで 冷えた体に流し込む
白菜と 鳥肉と 天ぷらの炊いたのと
スパサラと焼魚、それに高菜の漬物が
並んだ食卓に向かい合い
僕と妻は
今日一日の出来事などを語り合いながら
豊かな夕げを楽しむのでした
食事の後は寝転んで ちょっと良い唄が
流れているテレビを眺めたり
別にこれと言って話もせずに
ゆっくりお茶を すすります
やがて立ち上がった妻は
流し台で洗いものを始め
僕は僕で 机の前にどっかと座り込んで
ぷかぷかと煙草を吸いながら
こうして ワ-プロで遊んでいます
もう少ししたら 妻もすぐ側に来て
洗濯物など たたみ始めると思います
その内に 十二時が近ずくと
二人の一日は終わり
目覚めると 又次の一日が始まるのです
付け足して言うと 僕は十二時近くまで
焼酎を飲んでいます
日々の生活は 概ねそんなものであり
別にこれと言って
大した変化はありません
たまに友達が訪ねてくれたり
両方の親に電話をしたり
それは自然に流れているようです
平凡と言えば これも平凡な生活で
たまには喧嘩をしながらも
仲良く生きているようですし
仲良く生きていけそうです
まだ何も知らずに生きていた頃は
人は何のために生きているのかなんて
暗闇の中に点在する明かりを眺めながら
時には泪を流して考えてみたり
平凡な人生を嫌悪したりしていましたが
それも もう遠い昔話のようです
結婚をして 人並みに休みを楽しみにして
働いているこの頃では
何気なく 安らかに暮らせる日々が
この上ないもののような気がするのです
人は放っておいても病気もするし
イヤラシイ心根も持つし
人を傷付け 人から傷付けられ
やがては死んでゆくのです
何を持っても 何を望んでも
永遠に手にしていられる筈もありません
どんなに愛する人とでも
離れなければならず
どんなに嫌な人とだって
付き合っていかなければならない
何が分かったところで
何が出来たところで
心安らかに微笑んで暮らす日々が
なぜだか とても大切なもので
そんな安らぎの中からしか
哀しさを憂える心は
生まれないような気がします
貴方が今 幸せなのか
空ろな心で 悩んでいるのか
僕には何も分かりませんが
もしどうであったとしても
僕にはどうすることも出来ないのですね
貴方の代りにはなれませんものね
何も知らなければ 何も気付かず
世の中の人の流れのなかで
自分の幸福を追い求めてゆけば
結構気楽に 日を送れるのかも知れません
それでは少し寂しい人の為に
少し寂しい僕のために
お釈迦様はいらっしゃるのかもしれません
欲望に 身をさいなまれ
自ら苦を作りながら
それでもどうにかして
誰かの為になりたい人の為に
手招きしていらっしゃるのかもしれません
それに気付いたところで
飛び込んでゆく勇気もない僕ですが
平穏であればこそ 満足であればこそ
この身の不自由さ 醜さを思い知らされる
今日 この頃です
よろしければ 一度お訪ねください
一緒に酒でも飲みながら
不自由な言葉でも
精一杯語り合いましょう
では さようなら
呉々も お幸せに
貴方の為にも
貴方を 待っている人の為にも



